日本のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が2023年10月1日から始まり、事業者の経費計上や仕入れ税額控除に大きな影響を与えています。Aliexpressのような海外のECサイトを利用する際、「適格請求書」の発行可否は特に重要な問題です。結論から言うと、Aliexpressは日本のインボイス制度に直接対応していません。
この状況で、Aliexpressでの購入を事業経費として適切に処理するための「お得ルート」ならぬ「適正経費計上ルート」を解説します。
Aliexpressは日本のインボイス制度に非対応
現状、Aliexpressのセラー(出品者)は、日本の税法で定められた「適格請求書発行事業者」ではありません。これは、彼らが海外事業者であるため、日本の税務当局に登録する義務がないためです。
そのため、Aliexpressから直接、日本のインボイス制度の要件(登録番号の記載など)を満たす「適格請求書」を発行してもらうことはできません。
仕入れ税額控除の原則的な対象外
インボイス制度では、原則として「適格請求書発行事業者」から交付された適格請求書を保存しなければ、仕入れ税額控除を受けることができません。Aliexpressからの仕入れは、この原則から外れることになります。
消費税の扱いの違い
Aliexpressでの購入は「商品の輸入」に該当します。この場合の消費税は、商品本体の価格に含まれる国内取引の消費税とは扱いが異なります。
- 商品代金: Aliexpressのセラーに支払う商品代金には、日本の消費税は含まれていません。
- 輸入消費税: 商品を輸入する際に、税関で課される「輸入消費税」と「関税」は、配送業者を通じて支払います。この輸入消費税については、配送業者から発行される「輸入許可通知書」や「課税通知書」が、仕入れ税額控除の対象となり得ます。
Aliexpressでの購入を事業経費とするための対応策
「適格請求書」が得られないからといって、Aliexpressでの購入が経費として認められないわけではありません。以下の書類を組み合わせて保管することで、事業経費としての証拠力を高めることができます。
-
Aliexpressの注文詳細
購入した商品の内容や金額、日付、セラー情報などを証明する基本書類です。
- マイアカウント内の「My Orders(私の注文)」ページから、該当の注文を選択し、詳細画面を印刷またはPDFで保存します。
- 一部のセラーや商品では、注文詳細画面に「Download Invoice PDF」のようなボタンが表示されることもあります。これは簡易的な請求書ですが、取引の証明として有効です。
-
決済事業者からの明細
実際に支払いが行われたことを証明します。
- クレジットカードの利用明細: クレジットカード会社が発行する明細書(オンライン明細の印刷・PDF保存を含む)。購入日、金額、購入先(Aliexpress)が記載されています。
- PayPalの取引履歴: PayPalで決済した場合、PayPalの取引履歴を印刷またはPDFで保存。取引日時、金額、相手先が明記されます。
- PayPayの支払い履歴: PayPayアプリの支払い履歴や利用明細を保存します。
-
輸入許可通知書(課税通知書)【最重要】
輸入消費税が課された場合に発行される、仕入れ税額控除の鍵となる書類です。
- 商品が日本に到着し、関税や消費税が課された場合、配送業者(日本郵便、DHL、FedEx、FedExなど)から発行されます。
- この書類には課税された消費税額が明記されており、この部分の消費税は仕入れ税額控除の対象となり得ます。紛失しないよう必ず保管してください。
-
### 商品到着の証明
実際に商品が手元に届いたことを示す補助的な証拠です。- 配送追跡履歴のスクリーンショットや、商品写真なども、必要に応じて保管しておくと良いでしょう。
経理処理上の重要な注意点
Aliexpressでの海外仕入れは、国内取引とは異なる経理処理が必要です。
- 消費税は「輸入消費税」として扱う:
Aliexpressに支払う商品代金(海外セラーへの支払い)は日本の消費税の対象外です。仕入れ税額控除の対象となるのは、税関で課された輸入消費税のみであることを理解しましょう。 - 免税事業者・簡易課税事業者への影響:
ご自身が免税事業者や簡易課税制度を適用している場合、そもそも仕入れ税額控除の適用を受ける必要がないため、インボイス制度への対応は大きな影響を与えません。 - 専門家への相談:
特に事業規模が大きい場合や、Aliexpressからの仕入れが頻繁にある場合は、顧問税理士や税務署に相談し、適切な経理処理方法を確認することが最も確実です。
まとめ
Aliexpressは日本のインボイス制度に対応していませんが、購入を事業経費として計上することは可能です。そのためには、Aliexpressの注文詳細、決済履歴、そして最も重要な「輸入許可通知書(課税通知書)」を漏れなく保存することが、「適正経費計上ルート」を確保するための鍵となります。
これらの書類を適切に管理することで、安心してAliexpressをビジネスに活用し、賢くコストを管理できるでしょう。
コメント